なぜエアコンが壊れても直せないのか?
なぜ、これほどまでにエアコンの購入費用や修理費用の支給は拒まれるのでしょうか。その原因は、厚労省の通知でエアコンが「家具什器(かぐじゅうき)」に分類されていることと、行政の基準の運用実態にあります。
生活保護制度において「家具什器費」とは本来、火災で家財を失ったり、犯罪被害から逃れるために転居したりするなど、予期せぬ緊急事態に対応するための費用です。そのため、支給が認められるのは、「特別な事情」がある場合に限定されています。生活保護手帳では、以下の事由を例示しています。
新たに生活保護が始まった時点で、生活に必要な家具が何もない場合
災害で家具がすべて失われた場合
長期入院から退院し、ゼロから一人暮らしを始める場合
厚労省は、エアコンをこの「緊急時用の枠組み」に無理やり押し込んでいるのです。一見すると問題ないようでも、明らかな矛盾があります。それは、「長年使って古くなったから壊れた(経年劣化)」は、誰にでも起こりうる当たり前のケースと扱われ「特別な事情」と認められないことです。
この運用は、法の趣旨に反しているといわざるを得ません。
生活保護法は、年齢や健康状態など、その人の実際の必要性に応じて、臨機応変に適切に保護を行わなければならないという「必要即応の原則」を定めています(同法9条参照)。
過去の最高裁判例や法解釈においても、マニュアル通りの一律基準が目の前の人の命を脅かす場合には、行政は個別の事情を優先しなければならないという原則が確立されています。
したがって、熱中症リスクが高い高齢者や障害者、子どもがいて、エアコンがない(または壊れている)という要件を満たしている場合、福祉事務所には「支給しない」と判断する裁量権はないのです。
最も重要な生命が脅かされている状況があるにもかかわらず、「例外は認めない」「他の人との公平性が保てない」といった理由で支給を拒否することは、行政の裁量の逸脱濫用にあたる疑いが濃厚です。
現場で繰り返される「公平性」という言葉は事実上、「みんな我慢しているのだから、あなたも我慢して」という、弱者を切り捨てるための言い訳として機能しています。
しかし、真の公平性とは、誰もが等しく「健康で文化的な最低限度の生活」を送れるよう、個々の状況に合わせて法を執行することにあります。
お金がないなら借金して購入を
では、前述のような「特別な事情」が認められない世帯はどうすればいいのでしょうか。
エアコンがなければ命に関わる、しかし買うお金はない。そんな人々に向けた厚労省の最新の通達には、以下の一文が記されています。
「保護費のやり繰りによって(エアコンの)購入が困難な場合には、生活福祉資金貸付を活用して購入していただくことも可能」
平たく言うと、「生活費を切り詰めても買えないなら、社会福祉協議会で借金をして買いなさい」と言っているのです。
日々の食費すら極限まで切り詰め、爪に火をともすような生活をしている困窮世帯に対し、国は「借金」を指導しています。しかし、生活保護費は最低限度の生活を維持するためのギリギリの額です。そこから毎月の返済を強いられれば、生活は破綻します。これは「自立の助長」どころか、行政自らが被保護者をさらなる貧困と絶望の淵へ突き落とす行為に他なりません。
実際に福岡県のB市では、この通達通りの冷酷な対応が行われています。エアコンの故障を訴えた60代女性のレイコさん(仮名)に対し、市は「一律公平に支給しない」「社協から借りるように」と突き放しました。
レイコさんは身体が不自由で、現在は障害年金の申請をしている状態です。働いて返すこともままなりません。本記事の執筆にあたり、改めてレイコさんに現在の心境をうかがいました。彼女の言葉は、制度の欠陥を鋭く突いています。
「エアコンがない夏を迎える不安で、『死んでしまいそうです』とまで訴えました。それでも役所は、頑なに支給はできない、の一点張りです。悔しくてたまりません」
「死ぬかもしれない」という市民の悲鳴よりも、「借金をさせるルール」や「悪平等の維持」が優先される。これが、現在の日本のセーフティーネットの偽らざる実態なのです。
長期的に「貧困の悪循環」を招くおそれ
運良く「特別な事情」という高いハードルを越えて、エアコン支給が決まったとしても、そこにはさらなる非現実的な壁が待ち受けています。それが、「本体と設備工事費込みで6~7万円台」という極めて低い上限額の設定です。
昨今の物価高騰の中、工事費込みでこの価格帯に収まるエアコンを探すのは至難の業です。
結果として、受給者は型落ちの売れ残りや、性能の低い安価な機種を選ばざるを得なくなります。
安価な古いモデルは省エネ性能が低く、最新機種に比べて電気代が跳ね上がる傾向にあります。ただでさえ逼迫している毎月の生活扶助費(食費や光熱費)を、高い電気代がさらに圧迫することになります。
初期費用は抑えられるかもしれませんが、光熱費の負担が大きい機種をあえて選ばせるに等しい運用は、長期間にわたり被保護者の家計を圧迫し続け、自立を遠ざける「貧困の悪循環」をもたらしかねません。それは結果的に社会経済に大きなマイナスとダメージを及ぼします。
裁量の逸脱濫用と「健康で文化的な最低限度の生活」の崩壊
生活保護法3条は、「最低限度の生活」とは「健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と定めています。この基準は、すべての国民の生存権を保障する憲法25条の理念を具体化したものです。
しかし、現代の「災害級の猛暑」において、エアコンはもはや贅沢品ではなく、生命維持に不可欠なインフラとなっています。この状況下で、エアコンの支給を拒否する行政の運用は、この憲法上の要求を満たしているのでしょうか。
生活保護の基準設定(何が最低生活費か)は、厚生労働大臣に委ねられた裁量権に基づいています。しかし、この裁量権は絶対的なものではありません。
老齢加算廃止訴訟の最高裁判決(平成24年(2012年)2月28日)は、行政の裁量権について、「現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定した場合」は、憲法や生活保護法の趣旨に反し、裁量権の逸脱濫用にあたり、違法となるという判断基準を示しました。
本来、生活保護の決定実施は、要保護者それぞれのもつ様々な事情を十分に把握し、個別的、具体的事情に着目して、具体的妥当性を持つものとすることが求められています。
ところが、問題の通達は、エアコンの購入費の認定を、「実施機関が真にやむを得ないと認めたとき」という極めて曖昧な裁量基準に委ねています。そのため、ケースワーカーや実施機関の解釈しだいで認定の可否が分かれています。事実上、「現実の生活条件を無視した著しく低い基準」として機能していると評価せざるを得ません。
加えて、同様の困窮状態にある被保護者間で不平等が生じています。この状況は無差別平等の原則(生活保護法2条)に抵触するおそれがあります。
エアコンの必要性が高まる中で、本来は新たな扶助費の創設や、より効果的な制度の構築運用が求められます。エアコンを「家具什器」の枠組みでとらえることに無理が生じているのです。
命を守るため「ルールの正常化」を
厚労省は毎年、熱中症予防の通達を出して、国民に注意を呼びかけます。しかし、その裏で生活保護世帯に「エアコン購入費用は自分たちでなんとかしろ、無理なら借金しろ」と書き添えるに等しい矛盾があります。
エアコン代を経常的な生活扶助または夏季加算として認め、経年劣化による故障も支給対象とすべきです。また、省エネ性能を考慮に入れ、科学的かつ公正な積算根拠に基づいた、現実的な支給額の上限設定が必要です。
これらは、過剰な要求ではありません。命を守るための最低限のルール変更です。行政は、「事務連絡」という紙切れ一枚で人の命を選別することになりかねない基準を見直すべきです。
すべての人々の生存権を等しく尊重する、憲法に基づくまっとうな運用が求められています。
親子2人、精神障害加算で
月額約20万円だな
厚着しろ
ファンヒーター
エアコン寒い
読んだ限りでは難しそうだ
夏はクーリングスポット開放しているところ行け
昔は何か羽織ってコタツ入ってたし
ヤバいのは夏
まともに働いてる人から吸い上げた金を働かない奴らにばら撒くなんて冗談じゃないよね
わかるわかる
境界知能じゃないのか
あまりにも生命力がなさすぎる
馬鹿なんじゃないのか?
北海道なんて外が猛吹雪でもパンツ一丁でアイス食える位快適だぞ
北海道みたいに暖房費の補助とかないし
え…?
夏なら分かるが冬は上着着て電気毛布で楽勝じゃん
そんなことすら出来ないから生活保護
ってのも有るんだろう
なんで行政が関係するんだ?
公営住宅だと自腹
ぼろい所に当たると暖房器具無いと厳しい
最高裁で不要判決出てるんだし日本人保護に注力しよう
恋人夫選びは慎重にね!
ってこと?
交渉相手は大家だ
それ以前は庶民は着れるだけ着込んで冬を乗り越えてた
賃貸住宅でエアコンが故障したらオーナー負担で買い替えだろ?
【悲報】米倉涼子、声明を発表 「事実です」 »
https://www.ben54.jp/news/3025
冬の寒さと夏の暑さがいずれも厳しいわが国では、エアコンはもはや贅沢品ではなく、生命を維持するために必要最低限のインフラとなっています。しかし、本来国が守るべき生活困窮者の中には、エアコンが壊れても買うことができないなど、命の危険にさらされている人もいます。
生活保護行政でも、エアコンについて「購入は原則自己負担」「壊れたら借金して修理」という、憲法25条(生存権)が骨抜きになりかねない運用実態が散見されます。
この年末年始も、壊れたエアコンの前で、あるいはエアコンのない部屋で、カイロを握りしめることもできず、寒さに耐えている人々がいます。「助けて」と言いたくても、役所の窓口は年末年始の休暇で閉ざされています。
本稿では、行政書士である筆者に届いた人々の現実的な苦悩と、最新の行政通達、そして最高裁判例が示す「行政裁量」に関する判断枠組みを照らし合わせ、わが国のセーフティーネットの問題点を検証します。(行政書士・三木ひとみ)
あるシングルマザーの悲劇
2024年8月、猛暑のさなか。神奈川県A市で小学生の娘と二人で暮らしていたシングルマザーのホノカさん(仮名・40代)は、住んでいた部屋のエアコンが故障し、行政に助けを求めました。
ホノカさんは、子どもの頃に受けた虐待により身心に障害を負っていました。また、娘のミズキさん(仮名・小学4年生)は、脳の病気を抱え入退院を繰り返していました。
ホノカさんは、ケースワーカーに窮状を何度も訴えました。しかし、返ってきたのは「このケースでは、例外なく費用は出せません」という言葉でした。
ホノカさんは諦め、灼熱の室内で娘さんと耐えていました。エアコンだけでなく、冷蔵庫も炊飯器も壊れていました。
私はホノカさんから相談を受け、行政書士として福祉事業所や厚労省にも電話を何度もかけ、交渉を重ねました。しかし、行政の壁は厚く、ついに障害を持つ母子家庭へのエアコン支給の公費が特例として認められることはありませんでした。
「公平な対応という観点から、ホノカさんにだけ特別に支給することはできない」それが、行政の回答でした。
そして、冬の寒さが厳しくなった2025年の年明け、ホノカさんが自宅で一人亡くなっていたという連絡が入りました。
ホノカさんがミズキさんと一生懸命、前を見て生きようとしていたことは、私が受け取った数々のLINEやメールからうかがわれます。
多くの安価な賃貸住宅において、エアコンは唯一の暖房器具です。それが壊れているということは、真冬の寒い部屋で、毛布にくるまって震えるしかないことを意味します。世間が正月を祝う団らんの灯りの陰で、ホノカさんはどれほどの寒さと心細さに耐えていたのでしょうか。
ホノカさんは「自分は生活保護を受けることができて恵まれているから」と、生活保護費を切り詰め、困っている被災地に支援を送っていたことがあるような、心の優しい女性でした。
行政の「公平性」という名の不作為によって、ホノカさんの気力体力が奪われていったことは想像に難くありません。
